思い出を語る場を、
テクノロジーで支える。
認知機能改善のための 「思い出工学プロジェクト」
ロボットやアプリなどの技術を使って、高齢者が思い出を語る場をつくる研究です。
思い出を語る時間が増えることで入居者様に笑顔が生まれ、職員の負担軽減と、どの施設でも同じ質のケアを届けることにつながります。
背景と課題
懐かしい記憶を思い出し、語り合う「回想法」は、認知症ケアや認知機能の改善に効果があるとされています。ただ、効果的に行うには、職員に認知症ケアの専門知識と、一人ひとりと向き合う時間が必要です。そのため、どの施設でも同じ質で行うことが難しいという課題があります。
概要
ロボットの一方的な会話ではなく、相互会話による高度な認知症アプローチを実現
デスクに置ける可愛らしい「小型の対話ロボット」と、入居者様の時代背景に合わせた「昔懐かしい写真カード(黒電話、古いアイロン、凧、オート三輪など)」を組み合わせたプログラムを展開しています。入居者様がカードを選ぶと、ロボットがそのアイテムを認識し、思い出を想起させる問いかけ(トリガー)を行います。「これを使っておられた頃、どんな生活をされていましたか?」といったロボットからの自発的な対話がきっかけとなり、入居者様が自然と過去の楽しかった記憶に触れ、自分の言葉で思い出を語る場が生まれます。
期待される効果
入居者様にとって
思い出を語る時間が日常の中に増え、脳への心地よい刺激となり、生き生きとした笑顔につながります。
職員・施設にとって
専門知識が必要だった認知症ケアの一部をロボットで仕組み化することで、一人ひとりの話を聴く職員の負担が軽くなります。また、どの施設でも同じ質のケアを届けられる「ケアの質の平準化」が期待されます。
これまでの研究の取り組み
① ロボットの導入
ロボットと思い出を語る場をつくるには、人がロボットに親しみや話しやすさを感じることが欠かせません。そこで、ロボットとキャッチボールを楽しみながら対話を進める場を提案しています。
② 笑い声の記録と記憶の想起
楽しかった思い出を想起できるよう、笑い声をきっかけにその前後の音声を記録し、振り返ることのできるアプリを開発しました。記録は地図上に表示され、当時の音声を聞きながら振り返ることができます。
③ 生活行動からの記憶の想起
日常生活の中にあるモノに着目し、モノに触れたときに想起を促す語りかけや情報を届けることで、普段の暮らしの中で自然に記憶がよみがえる環境の実現を目指しています。
④ チャットボットとの振り返り
チャットボットとの対話で記憶を振り返るとき、家族のような口調の方が親しみや振り返りやすさを感じられるのではないかと考え、親のような口調のチャットボットが振り返りやすさに与える影響を検証しました。
研究を担当する先生
泉 朋子 教授
主な経歴・プロフィール
大阪大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了。博士(情報科学)。名古屋工業大学ポスドク研究員、立命館大学情報理工学部助教、講師、大阪工業大学講師、立命館大学情報理工学部准教授を経て、2024年より現職。思い出工学や観光支援を対象としたヒューマンインタフェース分野の研究に従事し、ヒューマンインタフェース学会論文賞、電気学術振興賞論文賞など受賞。
論文・学会発表
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ヒューマンインタフェース学会論文誌 26(2)
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HCI International 2024
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2024
HCI International 2024
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HCI International 2023
プロジェクト概要
| 研究を担当する先生 | 立命館大学 情報理工学部 社会システムデザインコース 泉 朋子 教授 |
|---|---|
| 共同研究者 | 立命館大学情報理工学部 大津耕陽/立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO) 安藤雅行 |
| 研究プログラム | 立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)第4期拠点形成型研究プログラム(2021〜2025年度) |
| 研究テーマ | 記憶の想起を促すシステムの開発と検証(思い出工学) |
| 当社の関わり | 研究協力企業として、入居者・各専門職へのヒアリングおよび検証環境の提供 |
ICTの技術は急速に高度化していますが、高齢者支援の場ではICT技術の活用が進んでいるとはまだ言えません。その一つの原因として、高齢者ご本人やそのご家族、介護職の方々と一緒にサービス内容や機能について検討したり、フィードバックを得たりする場が少ないことが考えられます。
今回、株式会社はれコーポレーション様にご協力いただき、思い出を語る場を支援するロボットや情報システムを対象として、高齢者にとって使いやすく有用な機能等についての検討や、実現可能性の検証を行うこととなりました。ここで得られた知見を社会に提供し、持続可能な高齢者支援の実現に向けた成果発信ができるよう尽力してまいります。